米・大統領指揮下の委員会、合成生物学における倫理的境界線を定めたレポートを公開

昨年5月に、 クレイグ・ベンター博士が率いる研究チームは、世界初の自己再生する人工合成ゲノムを異なる種の細菌性細胞のなかで作りだすことに成功した。その後、メディアなどで、この実験の成功によってもたらされる潜在的な利益とリスクについての激しい議論が巻き起こった。「果たして、この実験を生命の創造と呼ぶべきか」ということもあわせて議論の対象となっていた。(関連記事は、こちら。)

こうした議論を受けて、オバマ大統領は、合成生物学の進展を把握し、リスクを最小限に抑えながら利益を最大にする倫理的境界線を特定するための委員会「Presidential Commission for the Study of Bioethical Issues」を発足した。現在、この委員会の作成したレポート「NEW DIRECTIONS The Ethics of Synthetic Biology and Emerging Technology」が公開されている。

レポートは、べンター博士の研究は、自然の宿主に依存しており、無機的な化学物質のみで生命を創造したとは言えないとしている。しかし、その実験結果がもたらす潜在的な利益は絶大であり、リスクに対しては、利益を損なわない範囲での適切な注意が払われなければならないとしている。これを踏まえて、委員会は、次の5つの倫理原則(ethical principles)を打ち出している。

1. 公共の恩恵(public beneficence)
2. 責任ある管理(responsible stewardship)
3. 知的自由(intellectual freedom)
4. 民主的な審議(democratic deliberation)
5. 正義と公平さ(justice and fairness)

レポートには、さらに、これらの原則を実行すための18の勧告が示されている。新たな規制を求めないレポートに対して、多くの科学者からは称賛の声があがっている。一方で、環境団体などは、強く反発している。(The New York Times)

Presidential commission urges caution on ‘synthetic biology’
Washington Post Thursday, December 16, 2010
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/12/16/AR2010121600019.html

U.S. Bioethics Commission Gives Green Light to Synthetic Biology
The New York Times Thursday, December 16, 2010
http://www.nytimes.com/2010/12/16/science/16synthetic.html?_r=1

Panel Calls for Measured Development of Synthetic Microbes
Global Security Newswire Thursday, December 16, 2010
http://gsn.nti.org/gsn/nw_20101216_9541.php

「NEW DIRECTIONS The Ethics of Synthetic Biology and Emerging Technology」のダウンロードは、こちら