Closing Reception

セッションも終了し、大学内の建物の屋上にある海を見渡せるゲストルームでレセプションです。

終わりの言葉があり

修了証をもらい、記念のマグカップを頂き、

語らい、

ドミトリーで夜遅くまで今後のバイオテロ対策について話し合った、、、、みたいです。

次に我々が顔を合わせるのはどんなときでしょうか。20代後半から30代後半の、ドクターも終えつつあり、これからじゃあ何しようか、
という連中が主に集まってのセミナーシリーズは、いわば種まきです。5年後、10年後、ここに何を持ち帰ってこれるか、
その時世界はどうなっているか、とても楽しみです。

話し合っているのを聞くと、政府系、とくにインテリジェンスコミュニティへの就職を狙っているものもいれば、
アカデミアを狙っているものも、コンサルとか行っちゃうかもな、という者など千差万別です。「これまでで最高のメンバーだ」
と言っておりましたが、こういう志を同じくしながらも異分野から来る人間の交流の機会は本当に楽しいものでした。ちなみに、
プログラムに入るための競争率は高いようです。実は締め切り過ぎてから申し込んだのですが、
多様性を重視するので日本人だから入れてくれたのでしょう。参加者はもちろん、
スピーカーもポジション的にも非常にハイレベルな方が来たので、米国の最新の状況を知る上で勉強にもなるし、
交流の機会としても非常に重要な会議だったと総括したいと思います。

 

PPBT Final Day

AM:
National Security Decision Making
Richard Feinberg, UCSD
Gerald Epstein, CSIS Homeland Security Program

最後のフォーマルセッションです。アメリカの国家安全保障会議(National Security
Council)におけるDecision Making Processについての話でした。
日本も最近これのカウンターパートとなるべく組織を作っておりましたが、アメリカは1947年からの組織です。
日本がうまくいくまでには時間がかかるでしょう。大統領が議長なのですが、毎回来る大統領もいればたまにしか来ない大統領もいた、
などという話は面白いところです。アメリカの政治で重要なことの一つとして強調していたのが「部屋に入ること」。
高官に会って話が出来るかどうかのためにロビイストは大量のお金をつぎ込んでいるのだと。

PM:
Wrap-up and Recap Discussion: The Future of Biosecurity
Peter Cowhey, Sam Bozzette, Raymond Clark, UCSD

ついに最後のセッションです。
?最大のBio-Threatはいったい何か。そしてどの程度我々は恐れているのか?
?バイオセキュリティの向上のために最も重要なステップは何か?
というお題を元にディスカッションを致しました。

2週間を経過してメンバーの共通の認識はやはり自然発生の感染症の脅威が最も重要であり、公衆衛生機能の強化が必要である、
という認識でした。ちょっとこの件は込み入っているのできちんと分析するには時間がかかりますが、私が?で「日本の問題」として挙げたのは、

?ワクチン・薬剤の迅速供給の仕組みを作ること
世界で標準になりながら未だ日本に供給できていないワクチンがあること、治験から認可までのタイムラグの問題があり、
意図的なものであれ自然発生であれ新規感染症に対するワクチンや薬剤を迅速に供給できる仕組みでないことを説明。

?司法機関と公衆衛生期間の強化を行うこと
最近話題になった司法解剖制度がほとんど大都市でしか機能しておらず、「Bio-crime」
する見逃している可能性がある現状を挙げました。

?継続的な努力
(日本人はすぐに忘れちゃうんだよ、ていったら「別に日本だけの問題じゃないよ」と言われましたが)

立場によっても脅威の捉え方によっても重要な事柄は変わるので難しいところですが、とりあえず、の私の考えとしておきます。

PPBT day9

AM:
Legal Landscapes and Terrorism
Hon. Margaret McKeown

9th Circuit Court of Appeals

2001年のテロの直後、アメリカでは愛国者法Patriot Actと呼ばれる「2001年:テロリズムを阻止/
回避するための適切なツールを提供することによるアメリカ合衆国の統一と強化(Uniting and Strengthening
America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and
Obstruct Terrorism Act of 2001)」なるものが制定されました。
2005年末に失効する期限付きの予定でしたが、改編した後期限延長をすることになりました。さらにはTerrorist
Surveillance Programなる監視プログラムも行われていました。
こういった法律とプライバシーの問題について解説が行われました。

PM:
Communications and Media
Mike Sicilia, CA Office of
Homeland Security

Communications Exercise
Mike Sicilia, CA Office of Homeland Security
Philip van Saun, UCSD

午後は「クライシスコミュニケーション」について。
事態発生時にメディアにどう伝えるか、テレビなどメディアの前での発言には注意が必要です。この分野ではDr.Vincet
Covelloと
Dr.Peter Sandmannらの研究が有名です。 Tipsは良く聞くのですが、実際聞くのとやるのは大違い。
エクサザイズをすると矢継ぎ早に変な質問が飛んできます。日本でもやっているのを見たことがありますが、うまい奴はうまい。
これは生まれつきのセンスの問題もあるのではないかと。

CDCはメディアコミュニケーションのツールキットや研修会を催しています
教育が進んできたせいか、 CNNなどで災害の時などで担当者がインタビューを受けている際、
みんな同じような答え方をするようになってきた気がします。 まあこのような戦略が日本でそのまま通じるかは分かりません。
「まだ状況は分かりませんが、現在至急調査を進めており、 後ほど結果が出次第お伝えします」のような「いなす」戦略より、
ただ黙って頭を下げている方が日本では効果的かも分かりません。 でも研修の機会などはちらほら見かけるようになってきました。
しかし情報伝達戦略はカメラの前の瞬発力の問題だけではありません。情報コントロール系統をどのように構成し、
誰に向かってどのようなメッセージを届けるか。総合力もきわめて重要です。

今週も2回ゲストスピーカーとのディナーがセッティングされ、私はMike Siciliaとのディナーに行ってきました。
ディナー代はカーネギー財団持ちです。こうやってじわじわとネットワーキングが進んでいきます。
この席でプログラムマネージャーのRaymondがBiosecurityブログ立ち上げ構想を披露。
このコースの卒業生を巻き込んでWeb上のネットワーキングも進んでいく予定です。

PPBT day8

AM:
Clandestine networks and collective action; the case of al
Qaeda
Miles
Kahler UCSD

テロリストのネットワークの構造はいかのようなものか、をアルカイダのネットワーク構造分析を例に解説。
このようなネットワーク分析がテロ防止に役立つだろうか、というディスカッション。

PM:
What defines a Biological Threat?
-Challenge and Opportunities-
Lawrence Kerr, M.D., Office of
the Director of National Intelligence, Senior Bio
Advisor

アメリカのインテリジェンスコミュニティは国防総省、軍、CIA、
エネルギー省などのメンバーで構成され総勢10万人規模です。合衆国国家情報長官Office of the Director of
National Intelligenceはこのインテリジェンスコミュニティのトップであり、大統領や国家安全保障会議(NSC)、
国土安全保障会議(HSC)に助言する役割もあります。生物兵器については、この中の大量破壊兵器を扱うNational
Counterproliferation CenterにBiological Science Experts
Group(BSEG)が取り扱っています。一方National Counterterrorism
Center(NCTC)はテロに関する情報を全て集約しています。各種脅威をどのように分析し、捉えているかはなかなか興味深い話でした。

簡単に紹介すると、
「生物兵器の使用」=「Intent, Motivation, Committement」+
「Acquisition/Possession of Material」+「Scientific Technical
Capabilities」
              (意志・動機+原材料+技術)

と分け、その意志のレベル(自然発生?国家レベルの兵器開発)に分けて、どの要素にアプローチすべきか、を分析しておりました。

後半はPolicy Coordinating Committee Meetingと題して、いわゆる
「病原体の新規合成」の問題を話し合いました。バイオセキュリティ国家科学諮問委員会National Science
Advisory Board for
Biosecurity
は2006年12月に規制病原体の合成に関するバイオセキュリティ上の懸念に対して提言(
Addressing
Biosecurity Concerns Related to the Synthesis of Select
Agents)
を行っています。

近年DNAの新規合成は簡単に外注サービスで行われるようになりました。塩基数120ぐらいなら普通。
180くらいになると少々高度なテクニックがいります。うまく利用すれば規制病原体のウイルスを再合成することも不可能ではありません。
実際天然痘ウイルスの一部や毒素を植物で発現させるためのベクターなどといった注文が入った、という報告が寄せられたことがありました。
このような脅威に対し、
?新規合成DNAより規制病原体に関係する危険な配列をスクリーニングするシステムを開発
?新規合成DNAを提供する会社は注文情報とスクリーニング情報を保持する
?政府から資金を得たり契約をするものは、このようなシステムを利用している会社しか利用してはならない
といった提言を行っています。これは10月にさらに検討内容が報告されるのですが、
各省庁の代表をロールプレイしディスカッションをしました。

実際このようなシステムは技術的には不可能では無かろう、という意見がありました。
実際合成DNAの注文はネットベースでオートマチックに完結しています。あとは何を危険と判断するか、という問題です。続く問題は、
このような情報を誰がアクセス可能なのか、という問題です。場合によっては研究や開発のスパイ行動も可能な行為です。
さらにはこれを義務化すべきか、という問題が出てきます。そしてコストは、本当に抑止になるのか、普通に科学研究に投資した方がいいのでは、
などという意見も出ます。またアメリカの研究者が買っているDNAの多くは中国で生産されている、という事実もあります。
合成技術は世界中にとっくに広がっています。アメリカだけ規制したところで意味があるでしょうか。

まあ一定の抑止力にはなるでしょう。全く技術の無い者がただパーツを買ってきて組み立ててウイルスをばらまく、
という事態は抑止可能でしょう。ならず者科学者が思いつきでやってしまう事態も避けられるかもしれません。しかしちょっと技術があれば、
ちょっと昔の機械を動かせば外注しなくてもDNA合成は可能です。だいたいこういう規制は、
まじめにやっている奴が各種手続きなど余計な手間が増えるだけで、悪巧みをする人間はこういう規制に引っかかってこなくなってしまいます。
仮にウイルスが出来たところで、実験もせずに兵器として使うに至るのはほぼ不可能です。

まあ生物版エシュロンの仕組み作りの一部のようなものでしょうか。
ちょっとFeasibilityが薄そうな気がしてなりませんが、10月の報告が楽しみなところです。企業は規制を歓迎しているようです。
商売が増えますからね。

Evening
Pandemic Influenza: Science, Policies, and Politics

Sanford Weiner
, MIT

1976年春、米国政府は全国民へのブタインフルエンザウイルスのワクチン接種を決定。
秋に4000万人に接種を行ったところ、ブタインフルエンザの流行の兆しが見られないばかりか、
Guillain-Barre症候群など多数の副作用を出すに至り接種は中止となりました。これは、
1976年初頭に米国ニュージャージー州Fort Dickでブタインフルエンザのヒト感染が500名発見され、
ヒトーヒト感染を起こしている可能性がある、パンデミックの可能性がある、と判断されたことによるものです。
当時同じ情報を得ていたイギリスなどは何もしていませんでした。

この件は後日詳しく触れたいと思いますが、Weiner氏の主張は、現在の状況が1976年の状況に似ている、
1918年のストーリーは現在にはあまりにそぐわない、何年周期でパンデミックがやってくる、
という言い方は全くもってサイエンティフックでないのではないか、という話でした。

 

 

雑感

災害時対応の一つの問題としてコミュニケーションの問題が取り上げられます。警察と消防が共通の周波数を使おうとしない、
といった話が良く上がりますが、なんかそれも変だな、と。
警察と消防とか対応チームがみんな聞いている周波数を通常のコミュニケーションに使いたいでしょうか?コミュニケーションは話し手がいて、
聞き手がいてなりたつもの。話し手は聞き手が誰で基本的知識をある程度知った上で成り立つ会話をするわけです。
誰が聞いているか分からない無線チャンネルで、みんなが分かるように話せ、と言われたら面倒くさいでしょう。
メガホンを使って会話しているような感じで気持ち悪いでしょうね。迅速なコミュニケーションは逆に成り立たなくなる気がします。
もちろん個別チャンネルを確保しながら関係者一斉通知、のようなシステムは必要でしょうが。

バイオテロ・バイオクライムでは、インテリジェンスと公衆衛生の間のコミュニケーションが重要です。が、
アメリカでもFBIとCDCが情報を融通し合っているか、というとそうでもないようです。でもバイオテロの脅威を考えたとき、
検知器もいいですがやはりインテリジェンス、公衆衛生加えて法医学の連携が重要だな、と感じます。
バイオクライムを見つけるには法医学の力が必要ですが、日本の死体検案は先日新聞ネタにもなりましたがかなりお寒い状況です。

そういえば携帯のメールってすごいツールだな、と思います。契約者に無差別に「EZインフォ」などというメールを一斉に通知できる、
ということは緊急事態発生時に一斉にメールに通知を入れられる、ということですよね。
既存のインフラに目を向けると結構色々面白いものがあります。災害時に電気が止まっても無料で出てくる自販機など凄いツールだな、
と思います。レアな災害に対しては既存のインフラのDual Useは大変重要な課題で、
こういったものに社会インフラとして価値を認めなければいけないと思います。

などなどコミュニケーションの話題から始まった雑感でした。

PPBT day7

AM:
Advanced Program Evaluation
Craig
McIntosh
, UCSD

Dr. McIntoshは途上国のマイクロファイナンスのプログラム評価などを専門とするエコノミストです。
いわゆる社会政策的なプログラムが医学的結果(健康増進など)や貧困の解決などに影響を及ぼしているかをどのように評価するか、
という話でした。話している内容は疫学なのですが、違う専門用語を使うので少々理解に苦労します。
疫学の専門用語を使えばもっとシンプルなのでは?と思うのですが。簡単に言えば、
介入をしたときにそのグループにどのような影響があったかを見るわけですが、真の影響を見るには、
同じ期間にそのグループに介入をしなかった場合と比べてどの程度の影響があったかを知らなければいけません。
しかし当然そんな事は出来ないので、比較対象となるサンプルをいかに「同じ期間にそのグループに介入をしなかった場合」に近づけるか、
という話です。この場合二重盲験・ランダム化がベストな方法ですが、社会政策的介入ではなかなかそれが難しい。
(特に盲験は医薬の治験のプラセボと使って難しい。)ではどうするか、という話です。「ランダム化」と言わず「くじで当たった人が介入
(金銭付与など)を与えられる」という言い方が少々面白いところではあります。

どちらかというと比較的大規模で事象も希ではない統計学的に扱えるレベルの話なので、バイオテロ対策のように「希な」
イベントの評価には少々使いがたい話ではありました。

PM:
Disaster Preparedness and Response
Michael
Kleeman,UCSD

Kleemanはボストンコンサルティングの元バイスプレジデントを務めるなど技術系のコンサルタントで、
現在アメリカ赤十字のコミュニティプリペアドネスの戦略部長なども勤めている「Preparedness」のプロ。”
TogetherWePrepare”などといったコミュニティトレーニングなどをハリケーンカトリーナの事例などを中心にトーク&
Discussion.1週間もこの話をしていると、あらかた話も煮詰まってきた印象もあります。
やはりパンデミックインフルエンザに対するコミュニティの教育などは、「安易に脅威を強調したくない」という要素もあるようで、
プログラムの中にはまだ入ってきていないようです。

避難者の状況、薬剤のニーズなどをいかに迅速に把握するかも問題です。RFIDの活用、なども考えがあったようですが、
個人情報の問題でなかなか難しいようです。日本も個人情報の問題から自治体がニーズを把握できない、
ということがニュースに取り上げられていました。
でも個人の基本情報と常用薬などをバーコードとかQRコード化してバッジ化したり出来ないですかね。
避難所では入場時にそれをスクリーニングして必要量を把握。安定供給できるようにする。
バッジを持っている人は非常時に優先的にその供給を受けられる、というインセンティブでもつけて。

こういった市民レベルのプリペアドネスは、国によってユニークな部分があって良いものでしょう。日本であれば地震対策に強い。
ヘルメットや食料品や乾電池を備蓄し、避難場所などを決めている。そして年に1回防災の日に自治体やコミュニティで手順を確認している。
良くできたシステムです。これを軸にして「ではCBRNテロやパンデミックフルに対して何が足りないか」を分析し、
肉付けしていく形がよいのかな、と思います。あとは大規模災害対策のナレッジマネージメントが必要ですね。
中越沖地震でも過去の教訓が生かされてなかった部分があったという報道がたまにありました。しかし今回最も学び改善すべきは、
原発の問題です。安全面からもエネルギー政策面からも喫緊の課題です。

PPBT day6

AM:
Economic & Regulatory Perspecitives on Pharmalogical
Countermeasures
Michael A. Friedman, MD
City of Hope National Medical Center & Beckman Research
Institute

バイオテロに使われるおそれのある病原体は得てして治療薬や予防薬が無いわけですが、それらを作ろうとしても数々の障壁があります。
一つの医薬品を市場に出すまでにのプロセス、時間、金。いくらかかることか。それが希な病原体で、起こるかも分からない病原体に対して、
となると製薬会社も手を出したくはない領域です。開発が成功するとも限りません。
ましてや副作用で訴えられて巨額の賠償金を請求されたりするリスクもあります。しかし生物テロへの防衛上、
医学的対抗手段の開発は欠かせません。

国家にとっての医薬品の開発上のニーズとしては以下の要素が挙げられます。まず、供給は予測可能でなければいけません。
また急激な需要増大に応える、すなわち1ヶ月で3000万ドーズ供給せよ、
といったニーズに応えられるキャパシティが必要です。また優先順位が変化したときにはそれに応えなければいけません。また、
治療薬のみ、という対抗策でなく予防策など、予測されるリスクに包括的に応えられるものである必要があります。
製品は高品質、かつ安価である必要があります。使用が簡単である必要があります。
曝露前に10回打たなければいけないワクチン、1年飲み続けなければいけない薬では実用性がありません。さらには製品の使用法(期間、
投与量)
毒性・効果が明らかでFDAの承認を満たしている必要があります。

生産段階では、平時の需要に対して緊急時に急激に激増する需要に対応する生産設備の準備が必要です。
どのワクチンや薬剤から作るかも問題です。さらには契約期間がはっきりしていなくて困ります。規制側も承認に当たり、
どの程度の規模と期間の臨床試験を、何を指標に審査するか、毒性と効果の問題を考えなければいけません。企業としては、
副作用の賠償の問題や知的財産権、生産設備の償却、独占禁止法、販売方法について考えなければいけません。政府も「軍備か、生活か、
ワクチンか」という選択を迫られます。優先順位は何か、セキュリティをいかに保つか、基礎研究にはどの程度投資すべきか、問題は山積です。

特に議論になったのは基礎研究にどの程度投資すべきか、というところでした。時間がかかるのですが、
長期的には製品に育てるべきパイプラインが枯渇すれば結局企業は自分の首を絞めます。
一度基礎研究開発を中止すると最先端の技術に途中から追いつくのはきわめて難しいことになります。一方、
10年15年待っていられないこともあるのです。

今日の講義で強調されていたのは、基礎研究から製品化のプロセスの難しさです(よく”死の谷”と形容されますが)。
このプロセスの支援が非常に重要です。

また印象的な提起として、「リスクを排除する」発想ではなく「リスクを最小化する」発想が重要、という点がありました。
日本は特にこの発想が足りないですね。「ゼロリスク」にこだわりすぎる。リスク排除が無理だと分かるとリスクの存在に目を閉じ、
リスクがない、と勝手に考えて安心する。リスクの存在を認めて”最小化する議論”はなかなか好まない傾向にある気がいたします。

PM:
Introduction to Policy Analysis & Implications
Peter Cowhey,UCSD

政策分析方法のイントロダクションです。ステークホルダーを考え、文献検索、研究デザインを行い、
そのポリシーが因果関係にいかに影響を与えるか、どのくらいの期間影響を与えるか、利益がコストを上回るか・実行可能な政策か?
社会の反応や影響は?ほかの政策と比較してどうか?といったプロセスを踏まなければいけません。また政策に影響を与えようと考えるならば、
意思決定のプロセスをきちんと理解している必要があります。

A model for a smallpox Vaccination Policy
Sam Bozzette,UCSD/RAND

アメリカの天然痘ワクチン接種政策を例にケーススタディ。
NEJMでも掲載されていたシミュレーションを利用した分析の解説+いくつかのワクチンのオプション別のコストのポートフォリオについて紹介。

この件については書けば長くなりますが、全く持って答えはありません。最後は政策決定者の一存による問題といえるでしょう。
簡単に言えば、大規模な攻撃があれば事前ワクチン接種はきわめて有効であるし、起こったとしてもいたずら程度ならば、
事前接種による副作用に死亡・障害は大問題です。ではその攻撃が起こる可能性と比較して、となるわけですが、
そんなことは誰にも分かりません。

国によってもポリシーは違います。ワクチンの安全性を重視する日本では、
仮にアメリカの天然痘ワクチンの1/100の副作用リスクでも事前に接種をすることはない気がいたします。
ちなみに日本の場合は厚生労働省の「手引き」に大まかな接種ポリシーがありますが、事前接種は
(旧防衛庁のワクチン検討会の推奨する範囲以外は)原則しないことになっています。調達コストがどうこう、という分析はなかったですね。
まあ日本はLC16m8という認可済みの素晴らしいワクチンがあるのであまり議論の必要もないでしょう。
MVAという弱毒ワクチンとの比較はしています。

たまに「日本の政策形成プロセスは」などと言う話になりますが、アメリカとは違いますね。別に違うのは構わないのですが、
日本の政策はほぼ役所が主導権、分析よりも名目上は有識者委員会や研究班による発言の元に、というのが多いですね。。。

PPBT day5

AM:
Understanding the Danger of Agroterrorism
-Community Preparedness and Food System Disasters-
Jerry R. Gillespie, Western Institute for Food Safety and
Security/DHS

食品安全とアグロテロリズム(農業テロリズム)の話です。テロのターゲットとして食品が危険、
ということを公にさらしたのがアメリカ保健省(DHHS)のヘッドだったTomy Thompson.2004年に「なぜFood
supplyを狙わないのか分からない」という挑戦的?な発言をしたことがあります。
どちらかというと食品汚染による食中毒などのストーリーが中心で、植物や家畜を狙って食品供給を脅かすテロ、の話ではありませんでした。
日本では雪印牛乳事件が良いケーススタディになるかもしれません。簡単にTable Top Exerciseを行って終了。

PM:
Continuum of Vigilance I-Control and Verification

Control Regimes
Peter Cowhey, UCSD

いかに生物兵器開発を抑止するか?国際関係論のベーシックな用語解説から入ります。国際社会の連携・
協調を行う仕組みについて解説されました。普段分野が違うので自分が聞かない話なので大変勉強になります。

Verification & the International Biological Crimes
Control Regime
Raymond A, Zillinskas, Center for Nonporliferation Studies,
Monetary Institute of International Studies

生物兵器の開発を抑止するシステムとして「オーストラリアン・グループ」と「生物兵器禁止条約」がありますがこれらの説明。Dr
Zillinskasはアメリカの軍備管理軍縮局に在籍しロシアやイラクの生物兵器開発システムの査察を担当しており、
珍しいスライドに目を奪われました。いわゆる「査察」の有効性を主なテーマとしましたが、
イラク及びソビエトの生物兵器開発をなぜ防げなかったか、について書きたいと思います。

共通する理由は
?話を聞ける適当な逃亡者がいなかった。
?スパイ情報も入らなかった。
?衛星写真でも見逃していた。
という難しさがありました。
特にソビエトの場合は
?KGBの情報隠匿システムが完璧だった。
?アメリカ・イギリスが政治的理由で査察をしたくなかった。
イラクの場合は
?生物兵器禁止条約に加盟していなかった。
?ソビエトと同様に政治的理由
といったことが挙げられていました。結局は査察をするのは国連なので、十分な査察をする金もないし拒否権を持つ国の意向にも左右される、
という要素が入ってきてしまう、ということのようです。

 

 

 

 

PPBT Day 4

Understanding, Measuring&Enhancing Public Health
Preparedness(AM)
Table Top Exercise-Pandemic
Preparedness(PM)

Nicole Lurie, RAND corpolation/HHS
 Jeffrey Wasserman,RAND corporation

今日はUCSD SuperComputer Centerの会議室でVideo Conference形式。
といってもLurieがワシントンDCからログインしただけですが。RAND
Cooporationという政策系シンクタンクによる政策分析とTable Top Exerciseの話です。

右上のテレビがLurie。

実はPublic Health Emergency Preparednessという言葉、
よく使われる割にきちんとした定義がありません。プレイヤーやインフラはいったいどこまでをいうのか?保健所や厚生労働省だけなのか、
ほかにもコミュニティや学校や病院も含むのか?すべき仕事は何か?などなど非常に難しいところです。またその評価方法も一定していません。
アメリカの公衆衛生システムは一時期機能低下の一途でした。しかし、2001年の炭疽菌によるテロの後、
60億ドルもの投資がなされましたが、実際どの程度Preparednessが向上したのか?
を評価する手法がないのが問題で試行錯誤が続いています。

ちなみに「Public Health Emeregency Preparedness」の彼らの定義は、

style="MARGIN-RIGHT: 0px">

“the capability of the public health and health care
systems, communities,and individuals, to prevent, protect
against, quickly respond to, and recover from health
emergencies, particularly those whose scale, timing, or
unpredictability threatens to overwhelm routine
capabilitities”(公衆衛生・ヘルスケアシステム、地域社会及び個人が、とりわけ規模・タイミング・
予測不能性から通常の対処能力を超えるような健康を脅かす危機を予防したりこれから防御したりこれに迅速に対処し原状回復するための対処能力)

としています。これでもかなり幅広い定義ですが。。。また、RANDではTabletop
Exerciseを行い、対処能力をスケール化し点数化する試みを行っており、そのプロジェクトの紹介がありました。

さて、公衆衛生レベル、
身近な例で言い換えれば保健所レベルにとってバイオテロ対策とはどう捉えるべきものでしょうか。

公衆衛生の仕事からすると、このようなEmergency
Responseは基本的機能の上に成り立つ応用問題みたいなもので、機能のピラミッドの一番上に立つものです。

Public Health Emergency Response

—————————-

Surveillance/Lab Capacity/Epi Intelligence

————————————————————-

Workforce capacity/Info&Data
System/Organizational & System Capacity

バイオテロ対策という点も公衆衛生インフラの視点で見れば通常の感染症アウトブレイクの応用です。
違いがあるとすれば、犯罪として扱う捜査活動が関わるので司法機関との連携が必要、という点でしょう。よって、バイオテロ対策で
「いかに準備できているか」を知る上で、通常のアウトブレイク対策のプロセスで評価していくことが出来るのではないか、
という意見がありました。しかし、ルーチンワークの評価をアウトブレイク対策評価にそのまま外挿できるか、
という点では規模の違いなどを考慮する必要があるのでは、という意見がありました。

司法機関との連携が必要、と述べたように、Emergency
Responseでは色々な機関が関わってくるので”Coordination”が非常に重要になってくるのもまた特徴です。
そうするとそこにはLeadershipが必要になってきます。この2つはキーワードです。

さて、Emergency Prepaarednessには”隠れたコスト”が存在します。
それはそのほかの基本的な公衆衛生活動の予算や関心、人員・資源が減ってしまうことです。
日本もその点が制約の一つとなっているといえるでしょう。

午後はTabel Top Exerciseのお話し。パンデミック・
インフルエンザの簡単な机上エクササイズをしてディスカッションをしました。2007年10月、
東南アジアでパンデミックインフルエンザが発生し、WHOがレベル5を宣言、アメリカにも患者発生、
というシナリオで場面ごとに行うべき事を出し合いました。重要なのは、こういった机上演習は手順の確認ではなく、問題をあぶり出し、共有し、
ギャップを埋めていく作業の一部、ということです。

ほかPDSA(Plan-Do-Study-Act)サイクルの話やProcess Mapの作成など、
プロジェクトマネージメントの手法が紹介されていましたが、
こういった手法も日本のPreparednessの現場ではあまり生かされていない印象を受けます。さらにGlobal
Preparednessのために、東南アジア6カ国に対して疾病サーベイランスのサポートをしている話も紹介されました(Mekong
Basin Disease Surveillance Project by RAND)。おそらくこれは、
自国を守るためにこの地域でのパンデミックなどの発生データを自前でいち早く手に入れるべし、という発想でしょう。
日本も色々と海外援助をしています。太っ腹な援助で友好的になるのもいいのですが、そこで獲得すべきものは「データ」です。
得たデータを日本の防衛に生かす「戦略的」発想が必要です。
といっても日本国内にも集めただけで分析されてないデータは山のようにあると聞きますが。

 

 

PPBT day3

AM:
Community Epidemiology
Michele M. Ginsberg, San Diego County HHS

疫学についての簡単なレクチャー。疫学とは何か?どのような手順で行われるのか?どんな目的で行われるのか?
サーベイランスの種類について、そして実際に起こったOutbreak Investigatoinのケーススタディを行いました。San
DiegoカウンティのDisease reporting systemの報告票を見せてくれましたが、80種類の感染症について、
名前やソーシャルセキュリティナンバー、住所など全て報告するのには驚きました。(HIVの場合は名前は書かないようです)。
プライバシーに関わる情報はローカルの部署で調査をするためだけに使い、州や連邦政府には報告はしない、とのことですが、
少々驚きではあります。ちなみにアニサキスやら回虫、川崎病、トキソプラズマまで届けます。日本だったら4類までで、
定点観測にも入りません。
報告用紙の裏には届け出疾患とFAX/Tel/郵送の区別が書いてあり、届け出るべきタイムフレームが示されていました。
「診断後直ちに届け出」という表現より分かりやすいかもしれませんね。

PM:
Biological Terrorism: Threat & Response
Dean Wilkenig, Center for International Security &
Cooperation, Stanford Univ.

Prof Wilkenigは核政策やミサイル防衛で、生物テロの専門ではありませんが、バイオテロの脅威をどのように考えるべきか、
何が有効で何が有効でないか、見事なロジックとシミュレーションを利用した分析でレクチャーしてくれました。

4時間にわたる講義&Discussionだったのでここに書ききることが出来ません。要点をまとめれば

・生物テロの脅威は確実に増加しているが議論の余地もある。
・ただ生物テロの脅威、といってもその内容は多種多様である。
・最も力を入れるべき対策は”defense”であるが、外交や抑止力も重要な要素であり取り入れるべきである。
・対策の中でも特に公衆衛生対策の強化にもつながることに力を入れるべきである。

この一行一行に至る分析がなかなか明晰で奥が深いのですが、この内容は追々。

今日は彼の強調していた内容から、「Logistics(物資の輸送・配布)の重要性」を紹介します。
例えば炭疽菌が大量撒布されたとき、その被害は日ごとに増えていき、抗生剤をどれだけ迅速に沢山の人に配布することが出来るか、
が被害を最小限にする上で非常に重要となります。大量撒布の検知・同定、国家備蓄の輸送・配布、予防投薬、
除染というタイムフレームで経過していきますが、最もクリティカルなのは国家備蓄の輸送・配布の段階です。国家備蓄を配布場所
(POD:Point of Distribution)に移送するまでは良いが、PODをセッティングして配布要員を動員し、
その後人を集めて配布すべき人をより分けていかに短時間で配布を終えるか、ここがまだ弱いしボトルネックになっているとのこと。

振り返って日本の状況は、、、、天然痘対策を例に挙げればこのような分析は全く行われていません。備蓄量も満足にないし、備蓄場所は
「秘密」というだけでその後の配送のストラテジーも無し。各保健所が窓口になりますが、1保健所当たり20万人を扱うとして、
医師が一人1日50人接種が出来て、医師を何名動員して、、、と考えると完全に破綻しています。
まずは机上演習からでもボトルネック探しが必要です。ちなみに天然痘を診断してから国家備蓄が動員されるまで、
保健所から国への報告ルートを追っていくと最低1週間から10日かかってしまうといわれています。しかし、
天然痘に対して有効な対策を取るのに重要なのは「発生から2週間」。この間にどれだけの人にワクチン接種を出来るかが鍵となるのですが・・・
日本は意思決定系統も考える必要がありそうです。

2週間の内で3人の講師と一緒にディナーを出来る機会があり、どれかに一人一回参加できるのですが、私はこの方を選びました。

彼は元々物理学のPhDなのですが、PhD取得後政策系コンサルティングのRAND cooperationに就職し、
Policyの道に入りました。アメリカでは政府が科学の出身者を取りたがるので、
割合は多くないにしてもPhDから政策の道へ転身する人が少なからずいるとのこと。黒沢映画好きという彼は、秋に来日の予定があるとのこと。
セミナーを依頼したところ快諾してくれたので乞うご期待。